設立年
1822年
創設者
エドワール・ボヴェ
地域・国
スイス・フルーリエ
概要
ボヴェ(BOVET)はスイスの時計ブランドで、創業から200年近くの歴史を通して、高級時計、宝飾時計の分野で大きな存在であり続けました。特に19世紀には清朝の皇帝や貴族たちに懐中時計を愛用されていたことでも知られます。
エドワール・ボヴェは時計職人の家系で、フルーリエで芸術を学び時計作りの技術を学び、1814年に兄弟のアルフォンスとフレデリックと共にロンドンに渡り、さらに時計制作を研究しはじめます。当時のロンドンは時計制作の中心地で、数年の実務を積んだ後に、エドワールは1818年には東インド会社のオーウェル号に乗り込み、中国の広東に赴いて、自身の制作した腕時計を販売します。彼は4点の時計を1万スイスフランで販売しています。
そして1822年にオリジナルのボヴェ社が中国市場向けの時計を製造する目的でロンドンで設立されました。
広東を拠点にしたエドワール、ロンドンにとどまった兄弟のアルフォンスとフレデリック、フルーリエにとどまっている3人目の兄弟のグスタフが連携して、中国で時計を売るためのメゾンを作ったのです。
当時のロンドンは東インド会社の船で中国に時計を発送するのに有利であり、それを狙ってボヴェはロンドンで自身のメゾンを始めたと言われます。事業は順調に成功を収め、制作拠点をフルーリエに移し、現在のボヴェの基礎が築かれました。
1930年に中国から帰国したエドワールはフルーリエに戻り、自宅を建てますが、この建物はチャイニーズパレスと呼ばれ、1905年には町役場になって、現在はボヴェが創設に加わったカリテ・フルーリエ財団の拠点になっています。
さらにフルーリエ近郊に14世紀に建てられたモティエ城がボヴェ一族に売却されて以降の本拠の一つになります(この城は1957年にヌーシャテル州に寄贈されています)。
この様にボヴェはフルーリエの土地で大きな成功を収めた企業として確固たる地位を築きます。
1849年にエドワールが死去しましたが、その頃には中国ではボヴェの名前は時計と同義語になるぐらい、中国市場を席巻し、豪華な宝飾時計の分野で大きな地位を占め続けます。
こうしたボヴェの栄光の頂点は1855年のパリ万博で訪れます。ボヴェは中国皇帝から委託されて、ラグジュアリー部門でエナメル製のペアウォッチを出品。その美しさから金賞を受賞しています。
しかし、1855年ごろから中国の時計市場は、ボヴェにとっての「美味しい時期」が終わります。フランスとアメリカが中国に介入し始め、さらにお定まりの中国製の偽造品の氾濫で、信用が失われ、1864年までにはアヘン戦争の影響もあり、ボヴェは中国市場から手を引き、それだけではなく、会社もボヴェ一族の手から離れます。
その後、会社としてのボヴェの所有者は何度か変わりましたが、ボヴェ一族はフルーリエで時計製造と、ボヴェとしての事業継続に関わり続け、幾つかの特許も取得しています。
そうした努力も虚しく、1932年に操業停止。
そして、1948年にファーブル・ルーバがボヴェを買収。1950年にはボヴェブランドでの活動を辞めて、1966年にはボヴェ社の設備なども売却。ボヴェの商標も売却してしまいました。
これで、ボヴェは名前だけが残るブランドとして実態がないものになってしまいましたが、1989年に天才時計師が率いるパルミジャーニ・フルーリエがボヴェの商標を買収しました。
パルミジャーニ・フルーリエはボヴェブランドでは年間2千本以下という少量生産を実施。懐中時計のケースの様に12時位置にリューズを設置したデザインが特長のモデルを開発しています。
2001年にパスカル・ラフィー氏がブランドのオーナーを努めていたのですが、06年にそのラフィー氏がムーブ製造会社のディミエ1738を買収。これ以降はボヴェ社は自社製ムーブメントを供給元を得て、独立ブランドとして独り立ちしました。また、歴史的な建造物であったモティエ城をヌーシャテル州から買い戻して、ボヴェの工房にしています。
ボヴェの現在のラインナップは、1990年代に時計作りを再開したときから始まりますが、その構造には19世紀のボヴェ黄金時代の懐中時計の意匠や機構が多く用いられていて、また宝飾時計の名門であった歴史を思わせるようなエナメル加工の技術や、彫金などの技巧に優れたコレクションが揃っています。
機能的にも7日間の自毛巻トゥールビヨンなど、意欲的なモデルを発表し続けています。
ボヴェはこの21世紀という時代でも、昔ながらの大富豪の時計であり続け、3分の1以上がオーダーメイドで作られていて、唯一無二のものです。オーダーメイドはまずダイアルのデザインを決めて、それに合うムーブメントを作り、最後に装飾を施すというもので、オーダー内容によっては何年も掛かることがあり、なんとも浮世離れしたメゾンです。
そうしたわけで基本的にボヴェの時計は中古市場にたまに出てくるだけで、あまり入手しやすいものではないですが、時計コレクターやマニアには垂涎の的になっています。
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