ロレックスコスモグラフデイトナ

概要
ロレックス唯一の（通常の）クロノグラフモデルが「コスモグラフ　デイトナ」になります。ちなみにロレックスではクロノグラフのことをコスモグラフと呼ぶようですが、ヨットマスターⅡのようなカウントダウンクロノグラフは特にコスモグラフとは呼んでいません。

初登場は1963年。
50年代にもプレコスモグラフとも言うべきクロノグラフが存在しますが、これは商業的には成功したとは言えないコレクションだったようです。

1930年代、マルコム・キャンベルというレーサーが地上での世界記録を打ち立てたのですが、彼はレース中でも日常生活でもロレックス・オイスター（クロノグラフではない）を着用して居たのですが、レース中にも荒い扱いをしても壊れないオイスターの耐久性に感銘を受け、ロレックスに感謝状を送っています。
これがロレックスの創業者のハンス・ヴィルスドルフに強い印象を与え、この縁でキャンベルはロレックス最初の公式アンバサダーになっています。

そうした自動車レースとのつながりもあって、ロレックスは1962年からレースのタイムキーパーを務めるようになり、1963年に初のコスモグラフデイトナになるRef6239を発表します。
デイトナの特徴はメインダイアルとインダイアルに違う配色をして、視認性を高めたことと、ケース外周のベゼルにタキメーターを刻んだこと。
これによって、それまでのクロノグラフモデルと比べて格段にスポーティな雰囲気が強くなりました。

コスモグラフは、宇宙開発が盛んになった時代にちなみコスモ（宇宙）の名を冠したそうです。

また、当初はデイトナという名前ではありませんでしたが、カーレースのデイトナとの提携を強調するためにデイトナという愛称をつけました。
ちなみにデイトナはアメリカのインディアナポリスで行われるインディ500のことで、F1のモナコGP、ルマン24時間耐久レースと並んで、3大カーレースと呼ばれます。

デイトナはかなりヴァリエーションが多いコレクションで、Ref6239から始まりRef6240、Ref6241と続き、特にポール・ニューマンモデルは現在では驚くような高値で取引されています。

60年代後半にはセカンドモデルのRef6262、Ref6264が登場。ムーブメントが名機と呼ばれるCal.727が搭載されており、これは手巻きムーブメントの最高傑作、完成形といわれるほどです。

そして、70年代にRef6263，Ref6265が登場。当時はクオーツショックもあってなかなか新しいムーブメントを設計、製造することがさすがのロレックスでも難しかったようで、ずっとCal727を使い続けていますが、オイスターケースにねじ込み式プッシャーで50メートル防水を実現しています。一般的にリューズの他にプッシュボタンが存在するクロノグラフは防水性能をもたせることが難しく、当時は防水性能をもたせたことは画期的でした。このモデルの後半にはトリプルロックとなって100メートル防水まで進化しています。

そして、1988年。
4代目になるRef16520が登場します。
このモデルはロレックスの中でも画期的なモデルで、特徴は2つ。
1つはゼニスの誇る自動巻きクロノグラフムーブメントのエル・プリメロをベースにしたCal4030を搭載。それまでは手巻きムーブメントを積んでいたロレックスとしては念願の自動巻きクロノグラフムーブメントになります。
他社製ムーブメントをベースにしているとは言え、元のムーブの50％を変更していて、特にエル・プリメロの最大の「ウリ」である毎時36,000振動という高速ムーブであったのを、28,800振動に減少させて、メンテの回数を低減、脱進機、テンプ、ヒゲゼンマイなども変えています。
今では手巻きムーブメントを積んだクロノグラフというと、オメガのスピードマスタープロフェッショナルぐらいしかありませんが、当時は手巻きが一般的でした。
もう一つの特徴はデザイン面で大幅なリニュアルが行われて、現行モデルに近いものになっています。この頃から高級化もすすみ、ケース素材もゴールドを使ったモデルや、ダイアルにダイヤを使ったモデルなど、もうサーキットで活躍する時計というよりも、セレブ席でレースを感染するお金持ちの観客が使う時計になっていきます。

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そして2000年。長らくエル・プリメロベースのCal4030を積んでいたデイトナですが、完全自社製のクロノグラフムーブメントCal4130を搭載。Ref116520のシリーズになります。
このCal4130は開発期間5年というもので、強靭で正確さ、メンテのしやすさなどが改善されています。特筆すべきは垂直クラッチと呼ばれる機構で、クラッチとはそれぞれのインダイアルを担当する各インジケータに動力を供給する役割を負っています。
これまでのクロノグラフムーブメントは多くが水平クラッチでしたが、この新開発の垂直クラッチにすることで、クロノグラフ秒針の完全に性格なスタート、ストップが可能となり、計時の正確性に影響を与えることなく連続使用が可能になりました。
デザインも徹底的に見直され、パーツ数や使用しているネジも減少。香箱のサイズを大きく出来たので、パワーリザーブも伸び、耐衝撃性能や耐振動性も向上しています。
メンテナンス性も向上しており、メインスプリングはムーブ全体をケースから取り出さなくても交換可能になりました。
元々、エル・プリメロは1969年に基本設計が完成したもので、いくらCal4030がそれをブラッシュアップしても限界がありましたが、2000年に登場したCal4130はすべての面で性能がアップしており、超高級機であるロレックス　コスモグラフデイトナにふさわしいものでした。

また、ムーブメントの変更に伴い、インダイアルの配置が変わり、現在の形になります。
このRef116520は多くのマイナーチェンジを受けながらロングセラーとなり、2016年に現行のRef116500LNになります。
このモデルからベゼルがセラミック製になり、サビに強く擦り傷もほぼ防止するようになります。
Ref116500シリーズは細かい仕様の違いから多くのリファレンスナンバーが存在しますが、やはりエキゾチックダイアルや金無垢のモデル、ダイアを散りばめたモデルなどが多数存在し、価格も当然のように数百万のオーダーになります。

現在のデイトナはダイヤなどは使っていなくても、新品だと結構な新車が購入出来るほどで、とても簡単に手に入るような時計では無いですが、それだけに憧れの度合いは他のロレックスよりも一段と強くなっています。
仕事で成功したら、一本欲しいものです。

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